なんて素敵にジャパネスク (コバルト文庫)
雅な平安朝に時代設定を置き、藤原家の瑠璃姫をヒロインにして、陰謀渦巻く宮廷を舞台に恋と冒険を描いた絢爛絵巻。同時期に発表された作者のエッセイを読むと、東京に出てからは精神的にだいぶ落ち込んでいたらしく、本作はその反動で王朝文学を現代感覚で明るく爽やかに描こうとしたものらしい。題名にそれが良く出ている。 良くある設定ではあるが、瑠璃姫は姫様と言っても"おしとやか"で"はかなげな"とは全く正反対の活発な娘。いつも弟や恋人(本巻では候補 ?)の高彬を叱り飛ばしている。そして、瑠璃姫には心に決めた永遠の恋人"吉野君(よしののきみ)"が存在する(本巻では未登場)。だが、藤原家の姫である以上、天皇家に嫁入りする可能性は高い。実際、時の東宮は瑠璃姫を気に入っている。高彬は東宮の腹心とも言える忠実な部下で、瑠璃姫に恋心を抱いている。この三角関係(吉野君を入れると四角関係)が物語の一つの柱。これに東宮を巻き込んだ陰謀話が毎回絡む。陰謀対策は本来、高彬の役目なのだが、勿論瑠璃姫も大活躍する。窮地に陥った瑠璃姫を助けるのは高彬なのか、それとも...。 舞台設定を平安朝に持って行く事で、背景を自由自在に豪華に出来、かつ会話やストーリー展開は現代風なシャレた軽いノリで行ける。巧いアイデアを考えたものである。本作は好評だったようで、この後続編が数作続く。王朝気分で恋と冒険の物語を優雅に楽しめる快作。
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- 560 円
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