続ジャパネスク・アンコール! (コバルト文庫)
今から15年ほど前、私が初めてジャパネスクシリーズに出会った時の入れ込み様は、只者ではなかった。 その頃中学生だった私は、ジャパネスクシリーズを皮切りに、ありとあらゆる古典文学にはまり込んだ。それほどまでに、ジャパネスクは面白かった。 個人的には、第一巻と第二巻が当時最も好きであった。この、続ジャパネスクアンコールは、その頃の私にとっては、少しつまらない気持ちがした。 守弥の登場する最初の物語は大好きで何度も読み返したが、主人公に入れ込みすぎていた私にとって、恋のライバルといえる、夏姫の物語は、そこまで、好きにならなかった。 ところが、恋愛、そして失恋というものを経験した私には、夏姫の瑠璃姫の夫となる高彬への失恋を描いた、この作品は、とても味わい深く、夏姫の可憐な心情が良く描けてあり、少しオトナの読者にとって、一押しの作品である。 「今度恋をするときには、もっとおとなしいいいなずけのいる殿方にいたしますわ。」身分が違う高彬を好いていて、そして、瑠璃姫という身分相応の姫をうらやましくも思う一方、「瑠璃様のことがとても好きでしたの。」という夏姫のしたたかな強さ、優しさ、そう言ったものがとてもよく伝わってきて、ジンと来る。子供よりは大人の恋を描いた、氷室さんの渾身の一作といえよう。 この作品はぜひ、なかなか上手くはいかない現実の恋を経験した、読者に読んで頂きたい。
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